Long COVID(コロナ後遺症)と“ブレインフォグ”の最新知見
―2025年のエビデンスと、地域クリニックでできる対応ポイント―
新型コロナウイルス感染症が落ち着いた現在でも、感染後数週間~数か月以上続く身体・精神・認知の不調(Long COVID/コロナ後遺症)を訴える方が少なくありません。
代表的な症状には以下が含まれます。
- 倦怠感・疲労感
- 集中力低下
- 注意力の持続が難しい
- 記憶力低下
- 頭が“もやがかかったような感じ(ブレインフォグ)”
- 頭痛・動悸・めまい
- 睡眠障害や気分の落ち込み
2025年に入り、“ブレインフォグ”の医学的メカニズムに関する報告が増え、社会的にも医療的にも再注目されています。
内科クリニックとしても、
「コロナは治ったのに、最近どうも調子が戻らない」
という患者さんが来院される機会が増えており、丁寧な問診とフォローが重要になっています。
最新エビデンス:Long COVID と脳機能の関連(2025年アップデート)
1.ブレインフォグに「生物学的変化」
2025年に日本で行われた研究では、PET撮像を通して、
認知機能に関係する神経受容体(AMPA受容体)の密度が上昇しているケースが報告されました。
これは、
「ブレインフォグは気のせいではなく、脳で実際に起きている変化で説明できる可能性」
を示す重要な知見です。
2.長期化する症状の統計と傾向
- 明確な頻度は報告によって異なりますが、数%〜10%前後で長期化を訴えるケースがある
- 高齢者や基礎疾患(高血圧・糖尿病・脂質異常症)がある方ほど長期化しやすい傾向
- 「疲れやすさ」「集中力低下」は共通して多い症状
3.メンタルヘルスとの関連
症状が長引くことで、
- 不安
- 抑うつ感
- 睡眠障害
を併発するケースもあり、「身体の症状」と「メンタル」の双方を評価する必要があります。
クリニックでの実践的対応:問診・検査・フォローアップ
1.問診で確認するポイント(チェックリスト)
【感染歴】
- コロナ感染時期
- 重症度
- 後遺症の有無
【症状の内容と持続】
- 集中力低下、物忘れ、頭が重いなどの症状
- いつから/どの程度の頻度で起こるか
- 仕事・家事・生活に支障があるか
【生活習慣】
- 睡眠の質
- 食事・栄養
- 運動習慣
- 仕事のストレス
【基礎疾患】
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 心疾患・呼吸器疾患 など
2.検査の考え方
症状に応じて以下を組み合わせます。
- 血液検査(貧血・甲状腺・血糖・炎症マーカーなど)
- 心電図・血圧測定
- 認知機能の簡易スクリーニング(MMSEなど)
- 必要に応じて脳神経内科・心療内科への紹介
まずは重篤な疾患との鑑別が最優先です。
3.治療・サポート方針
Long COVID の治療は「特効薬」があるわけではないため、
生活習慣・睡眠・ストレス・基礎疾患管理の最適化が最も重要な方針となります。
① 生活習慣の調整
- 睡眠スケジュールの見直し
- 「疲れきる前」の軽い運動(ウォーキングなど)
- 栄養バランス改善(特に鉄・ビタミンD 不足のチェック)
② 基礎疾患のコントロール
高血圧や糖尿病が長期化症状の悪化と関連する報告もあり、
コロナ後こそ慢性疾患の管理が重要です。
③ メンタル・ストレスへの介入
- 不安・抑うつ・睡眠障害が症状を増強することがある
- 必要に応じて心療内科・精神科と連携する
今後の展望:Long COVID への社会的対応
- ブレインフォグの生物学的メカニズムの解明が進み、治療開発のヒントにつながる可能性
- 高齢化社会の日本では、「感染後の慢性症状+基礎疾患管理」が重要テーマとなる
- 医療機関だけでなく、職場・学校など社会全体での理解が必要
地域クリニックとしても、
「軽度の認知不調」「疲れやすさ」といった曖昧な訴えに丁寧に向き合うことが求められています。
まとめ
- Long COVID とブレインフォグは、医学的にも解明が進みつつある「実在する症状」
- 特に高齢者・基礎疾患のある方で長期化しやすい
- 生活習慣、睡眠、ストレス管理、慢性疾患のコントロールが重要
- 早めに相談することで、症状悪化を防ぎやすい
当院では、感染後の体調不良・集中力低下・疲労感などのご相談も受け付けています。
お気軽にご相談ください。

コメント