更年期と脂質異常症の関係について
~ホルモンの変化が引き起こす身体の変化とは?~
更年期(おおよそ45〜55歳)は、女性ホルモン(特にエストロゲン)の分泌が急激に減少する時期です。このホルモンの変化により、心身にさまざまな影響が現れますが、中でも「脂質異常症(高脂血症)」の発症率が大きく上昇することが知られています。
■ 更年期と脂質の変化:科学的な根拠
エストロゲンには、以下のような血中脂質に対する有益な効果があると報告されています:
- LDLコレステロール(悪玉)を減少させる
- HDLコレステロール(善玉)を増加させる
- 中性脂肪(トリグリセリド)を低下させる
しかし、閉経を迎えてエストロゲンが減少すると、これらの保護作用が失われ、脂質異常症のリスクが一気に高まります。
日本動脈硬化学会のデータ(2017年)によると、50代女性の約45%、60代女性では実に約60%が脂質異常症に該当すると報告されています。
■ 更年期に伴うホルモン変化と脂質異常
エストロゲンには、LDLコレステロール(悪玉)を減らし、HDLコレステロール(善玉)を増やす作用があります。しかし更年期によりエストロゲンが減ると、次のような変化が生じます:
- LDLコレステロールの増加
- HDLコレステロールの減少
- 中性脂肪(トリグリセライド)の増加
これらはすべて、動脈硬化や心疾患のリスクを高める「脂質異常症」の兆候です。
■ 更年期後の女性に多い脂質異常症
閉経後、女性は動脈硬化のリスクが急増します。60歳以降では、脂質異常症の頻度が男性より高くなるというデータもあります。エストロゲンの保護作用がなくなることで、血管が脆弱になるためです。
■ 無症状ゆえに油断は禁物
脂質異常症には自覚症状がありません。以下のような方は早めに血液検査を受けましょう:
- 更年期世代(45歳以上)の女性
- 閉経を迎えた方
- 健診でコレステロールが高いと言われたことがある
- 心疾患の家族歴がある
■ 予防と対策
● 食生活の改善
- 青魚・ナッツ・オリーブオイルで良質な脂質を補う
- 野菜・きのこ・海藻類で食物繊維をしっかりとる
- お菓子や揚げ物の頻度を見直す
● 有酸素運動の習慣化
- ウォーキングなどの軽い運動を週3回以上
- 続けることが最も大切です
● 定期的な血液検査
- 年1回は脂質項目を含む健康診断を受けましょう
- 異常があれば医師と相談し、必要なら薬物療法を検討します
■ まとめ
更年期は体の変化に気づき、健康管理を見直す良いタイミングです。脂質異常症の早期発見と予防により、将来の動脈硬化や心疾患を防ぐことが可能です。
当院では、更年期に差し掛かった方への血液検査・健康指導も行っております。気になる方はお気軽にご相談ください。
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