インフルエンザ変異株「サブクレードK」とは?
2025年冬シーズンは、例年より早い時期からインフルエンザが流行しています。その背景にあるとされるのが、インフルエンザA型(H3N2)の新しい変異株「サブクレードK」です。
サブクレードKは、A型インフルエンザ H3N2 から派生した新しいグループ(系統)で、専門的には「J.2.4.1 系統」に分類されます。ウイルス表面のタンパク質(ヘマグルチニン:HA など)に複数の変異を持つことで、従来の株とは抗原性(ウイルスの“見え方”)が変化していると考えられています。
その結果、「過去にインフルエンザにかかったことがある」「ワクチンを受けたことがある」方でも、感染しやすくなっている可能性が指摘されています。
なぜ今ここまで話題になっているの?
- 日本で検出される H3N2 の大部分がサブクレードK
厚労省などの解析では、今シーズン日本で検出された H3N2 ウイルスのうち、約9割以上がサブクレードKに属していたと報告されています。 - 流行の立ち上がりが早い
南半球(オーストラリアなど)でのシーズン終盤から増え始め、その後ヨーロッパ・日本を含む北半球に広がり、例年より早いタイミングで流行が始まっています。 - ワクチン株との「ズレ」がある
今シーズンのワクチンは、サブクレードKが目立つようになる前に選ばれた株をもとに作られており、抗原性の違いによる“ミスマッチ”が懸念されています。
こうした理由から、各国の公衆衛生機関や専門家が注意を呼びかけている状況です。
サブクレードKの症状の特徴
基本的には、従来のインフルエンザと同じような症状が中心です。
- 発熱(高熱〜微熱まで幅広い)
- 咳・のどの痛み
- 鼻水・鼻づまり
- 全身倦怠感・頭痛
一方で、海外・国内の報告を総合すると、次のような傾向も指摘されています。
- 「関節痛・筋肉痛」よりも「咳・鼻水」が前面に出る
いわゆる「関節がギシギシ痛むインフルエンザ」というより、強い咳や鼻水など、上気道症状が目立つケースが多いとされています。 - 消化器症状を伴うことがある
吐き気・腹痛・下痢などの消化器症状がみられる患者さんの報告もあります。 - 典型的なインフルエンザ像と異なり「風邪っぽく見える」ことも
高熱や強い関節痛が目立たず、「少し熱のあるひどい風邪」のように見える場合があり、受診や検査が遅れがちになる点が問題です。
「関節が痛くないからインフルエンザではない」と自己判断してしまうと、周囲への感染拡大につながるおそれがあります。
重症化リスクは?
現時点の報告では、サブクレードK自体が「特別に重症化しやすい」「致死率が高い」とまでは言えません。ただし、もともと H3N2 系統は以下のような方で重症化が問題となりやすいとされています。
- 高齢者
- 乳幼児・基礎疾患のある小児
- 心疾患・呼吸器疾患・腎疾患・糖尿病などの持病をお持ちの方
- 妊娠中の方
- 免疫抑制状態にある方
これらのハイリスクの方では、肺炎や急性脳症、心不全悪化などの合併症リスクがあるため、従来株と同様に早期受診・早期治療が重要です。
ワクチンは効かないの?
「サブクレードKはワクチンが効かない」という印象を持たれがちですが、実際にはもう少しバランスのとれた理解が必要です。
● 発症予防効果はやや低下の可能性
サブクレードKは、HA などの抗原に変異を持つため、今シーズンのワクチン株とのズレが報告されています。そのため、発症を完全に防ぐ力(発症予防効果)は、従来と比べてやや低下している可能性があります。
● それでも「重症化予防」の意味は大きい
- 海外データでは、サブクレードK流行下でも、小児で入院を防ぐ効果が 60〜75% 程度あったとする報告があります。
- 成人では発症予防効果は30〜40%前後とされていますが、重症化・入院を減らす効果は維持されていると考えられています。
つまり、「かからないための“完璧なバリア”ではないが、かかったときに重くならないための“シートベルト”としての役割は十分期待できる」と考えていただくと良いと思います。
● 既存の治療薬は有効と考えられている
オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル、バロキサビルなど、現在使用されている抗インフルエンザ薬は、サブクレードKに対しても有効とみられています。重症化リスクのある方や、症状の強い方では、発症早期からの抗ウイルス薬投与が重要です。
日常生活で気をつけたいポイント
1.「ただの風邪」と決めつけない
咳・鼻水・のどの痛みが中心でも、周囲でインフルエンザが流行している時期はサブクレードKの可能性があります。特に、
- 38℃前後の発熱がある
- 強い倦怠感・頭痛が続く
- 家族・職場・学校でインフルエンザが出ている
といった場合は、早めの受診・検査を検討してください。
2.基本的な感染対策の徹底
- こまめな手洗い・アルコール手指消毒
- 咳エチケット(マスク・ティッシュ・袖で口元を覆うなど)
- 人混みや換気の悪い空間をなるべく避ける
- 室内の定期的な換気と適切な湿度管理
3.体調不良時は無理をしない
発熱や強い倦怠感、咳が続く場合は、出勤・登校を控え、十分な休養と水分摂取を心がけましょう。職場や学校での集団感染を防ぐ意味でも重要です。
神代医院(福岡市早良区)からのメッセージ
今シーズンのインフルエンザは、サブクレードKの流行により、「例年より早く」「症状が風邪に似ていて気づきにくい」という点が特徴的です。一方で、ワクチンや抗ウイルス薬といった従来の対策が全く無力になったわけではありません。
- まだインフルエンザワクチンを受けていない方
- ご家族に高齢者・基礎疾患のある方・乳幼児がいらっしゃる方
- 学校や職場での集団生活が避けられない方
こうした方には、ワクチン接種を含めた早めの対策をおすすめします。
福岡市早良区荒江の神代医院でも、発熱・かぜ症状の診療、インフルエンザ迅速検査、各種ワクチン接種を行っています。気になる症状がある方、持病やお薬との兼ね合いで不安がある方は、お電話でお問い合わせください。
(本記事の内容は 2025年12月時点の情報をもとに作成しています。新しい知見により、今後内容が更新される場合があります。)


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