◆ 高血圧治療の重要性~データが示す「続ける治療」の力~
❚ 高血圧は命に関わる病気です
高血圧は、日本人の約4,300万人が抱える国民病です(厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」)。
自覚症状がほとんどないまま進行し、次のような病気を引き起こすことがあります:
- 脳卒中(脳出血・脳梗塞):高血圧があると発症リスクが約4倍(Circulation, 2011)
- 心筋梗塞・心不全:心臓に負担がかかり、リスクが増加します。
- 慢性腎臓病(CKD)・透析:高血圧による腎機能低下が原因となります。
❚ 血圧を下げると、どれだけリスクが下がるのか?
英国の大規模研究(Lancet. 2002)によると…
収縮期血圧が10mmHg下がると:
- 脳卒中のリスク:約40%低下
- 虚血性心疾患(心筋梗塞など):約25%低下
❚ よくあるご質問:「血圧の薬は一生やめられないの?」
このご質問は多くの患者さんからいただきます。
結論から言うと、必ずしも一生飲み続けなければならないとは限りません。
以下のような生活習慣の改善によって、血圧が安定し薬を減らせる、または中止できる場合もあります。
- 塩分制限(1日6g未満)
- 適正体重の維持
- 定期的な運動習慣
- 節酒・禁煙・ストレス管理
ただし、自己判断で薬をやめると、知らないうちに血圧が再上昇し、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まるため注意が必要です。
当院では、必要最小限の薬で、最大限の効果が得られるように、継続的に見直しながら治療を行います。
❚ 年齢・基礎疾患別の至適血圧目標(JSH 2024準拠)
高血圧治療の目標は患者さんの年齢や体の状態によって異なります。
分類 | 診察室血圧(mmHg) | 家庭血圧(mmHg) |
---|---|---|
一般成人(75歳未満) | 収縮期 < 130 / 拡張期 < 80 | 収縮期 < 125 / 拡張期 < 75 |
高齢者(75歳以上) | 収縮期 < 140 / 拡張期 < 90 ※可能であれば130/80未満を目指す |
収縮期 < 135 / 拡張期 < 85 |
糖尿病を合併する場合 | 収縮期 < 130 / 拡張期 < 80 | 収縮期 < 125 / 拡張期 < 75 |
慢性腎臓病(CKD) | 収縮期 < 130 / 拡張期 < 80 | 収縮期 < 125 / 拡張期 < 75 |
心血管疾患の既往あり | 収縮期 < 130 / 拡張期 < 80 | 収縮期 < 125 / 拡張期 < 75 |
✅ 家庭血圧の測定タイミング:
朝起床後1時間以内、排尿後、朝食前、座って1~2分安静にした状態で測定しましょう。
❚ 治療は「数字」ではなく「命を守ること」
- 高血圧の治療は、ただ血圧を下げるだけでなく脳・心臓・腎臓を守ることが目的です。
- 患者さんの年齢、生活、体力に合わせた現実的で安全な治療目標が重要です。
- 治療は「一生薬を飲み続けること」ではなく、最適なバランスで合併症を防ぐことです。
【参考文献・出典】
- 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
- 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2024」
- Law MR et al. Lancet, 2002; 360(9349):1903–1913.
- Whelton PK et al. Hypertension. 2018;71:e13–e115.
- WHO Hypertension Factsheet, 2023
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