腎臓の数値がちょっと上がっただけでしょう?

医療

◆ 慢性腎臓病(CKD)とは?~進行を防ぐカギは「血圧」と「血糖」の管理~


❚ 実は多い「隠れ腎臓病」

CKD(慢性腎臓病)とは、腎機能が徐々に低下していく病気です。

初期には自覚症状がほとんどないため、気づかずに放置されやすいのが特徴です。

日本には約1,330万人の患者がいると推計され、成人の8人に1人がCKDに該当する可能性があります(厚生労働省 CKD対策ガイドライン)。


❚ CKDが進行するとどうなる?

腎臓の機能が低下すると、次のような問題が起こります:

  • 体内の老廃物を排出できなくなる
  • 電解質(ナトリウム・カリウム)の異常
  • 貧血や骨粗しょう症、心臓病のリスク増加

さらに進行すると、人工透析が必要になることもあります。


❚ 原因の約7割が「高血圧」と「糖尿病」

CKDの主な原因疾患は次の2つです:

  • 糖尿病性腎症:糖尿病による血管障害が腎臓に及ぶ
  • 高血圧性腎硬化症:高血圧により腎臓の血管が傷む

透析導入の原因第1位は「糖尿病性腎症」で、全体の約40%を占めています(日本透析医学会統計 2023)。


❚ 腎臓を守るには?~生活習慣と薬の力~

CKDの進行を防ぐためには、以下のポイントが重要です:

  • 血圧管理(収縮期130未満、可能なら125未満)
  • 血糖管理(HbA1c 7.0%未満)
  • 塩分制限(1日6g未満を目安)
  • 蛋白尿のコントロール(ACE阻害薬・ARBなど)

特に、腎臓にやさしい降圧薬やSGLT2阻害薬など、CKDに効果的な薬剤が登場しています。


❚ GFR・蛋白尿でわかる「ステージ分類」

CKDは次の2つの指標で分類されます:

  • GFR(推算糸球体ろ過量):腎機能の程度
  • 尿蛋白(またはアルブミン尿):腎臓の損傷を示す

eGFR 自動計算ツール

eGFR(推算糸球体濾過量)は、腎臓の働きを評価する指標のひとつです。年齢・性別・血清クレアチニン値から簡単に計算できます。

※以下の項目を入力して「計算する」ボタンを押してください。










【使い方】

  • 年齢:半角数字で入力してください。
  • 性別:該当する性別を選択してください。
  • 血清クレアチニン:最新の血液検査結果をご確認ください。
  • 入力後、「計算する」ボタンをクリックするとeGFR値が表示されます。

【注意事項】

  • この計算結果はあくまで目安であり、診断を目的としたものではありません。
  • 医師の診断や指導を必ず受けてください。
  • 急性腎障害や特殊な体格の方では正確に評価できない場合があります。

❚ 「クレアチニンは少し高い」…それ、実は見逃せないサインです

健診などで「クレアチニンが少し高めですね」と言われたことはありませんか?

実は、クレアチニンがわずかに上がっただけでも、腎機能は大きく低下している可能性があります。

その理由は、腎機能(GFR)はクレアチニン値とは直線的ではなく、非線形に変化するからです。

たとえば、以下のようなケースが考えられます:

  • クレアチニン値 0.8 → 1.2 に上昇:腎機能は約30〜40%低下
  • クレアチニン値 1.0 → 1.5 に上昇:GFRは半分以下になっている可能性も

つまり、「クレアチニンはまだ基準内」でも油断できないのです。

年齢・性別・体格によってGFRは異なるため、eGFR(推算糸球体ろ過量)でステージを正確に把握することが大切です。

当院では、クレアチニンだけでなく、GFRや尿検査のデータを踏まえ、より正確なリスク評価と丁寧な説明を行っています。

❚ クレアチニンと腎機能は直線的に連動していない

下のグラフは、クレアチニン値のわずかな上昇が腎機能(GFR)に大きく影響することを示しています。

クレアチニン値とGFRの関係グラフ

たとえば、クレアチニン値が0.8から1.2へ上昇しただけでも、GFRは30~40%も低下する可能性があります。

だからこそ、「少し高め」の段階での対応が、将来の透析を防ぐカギとなります。

ステージ GFR値(mL/min/1.73㎡) 病期の目安
G1≧90正常だが蛋白尿あり
G260~89軽度低下
G3a45~59軽度~中等度低下
G3b30~44中等度~高度低下
G415~29高度低下
G5<15腎不全(透析が必要になる可能性)

※GFRや蛋白尿の状態により、生活指導や薬の内容も変わってきます。


❚ 「腎臓病を止める治療」は存在する

  • 早期発見と血圧・血糖コントロールでCKDの進行は食い止められます
  • 新薬(SGLT2阻害薬など)により、腎機能の維持に有効な治療選択肢が広がっています
  • 「年だから仕方ない」ではなく、正しく治療を続けることで透析を防ぐことが可能です。

【参考文献・出典】

  • 厚生労働省「CKD対策検討会報告書」
  • 日本腎臓学会「CKD診療ガイドライン2023」
  • 日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2023年)」
  • J-CKDI研究(日本CKDイニシアティブ)

🔹定期健診で「クレアチニンが高い」「尿蛋白がある」と言われた方は、早めの受診をおすすめします。

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