百日咳の疫学と現在の流行状況
■ 百日咳とは
百日咳は、ボルデテラ・パータスシス(Bordetella pertussis)という細菌によって引き起こされる急性の呼吸器感染症です。激しい咳発作が長期間続くことが特徴で、特に乳児では重症化するリスクが高く、注意が必要です。
■ 百日咳の3つの臨床経過
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カタル期(1〜2週間)
初期症状で、軽い咳、くしゃみ、微熱、鼻水など風邪に似た症状が現れます。
この時期が最も感染力が強く -
痙咳期(2〜6週間)
咳が激しくなり、咳発作(連続した咳とその後の吸気音「ヒュー」)が出現します。
乳児では無呼吸、顔面紅潮、嘔吐などを伴うこともあります。 -
回復期(2〜3週間~)
徐々に咳発作が軽減しますが、夜間や運動後に咳が再燃することがあります。
全経過は6〜10週間程度に及ぶこともあります。
■ 日本における疫学的動向
- 1975年に定期予防接種制度が導入され、患者数は一時激減
- 1990年代以降、免疫の減衰により3〜5年周期で流行を繰り返す
- 2025年春以降、福岡市を含む九州北部で感染者数が急増
● 2025年の特徴
- 患者の中心は10〜40代の成人層
- 乳児への家庭内感染が重症例の主な原因
- DPTワクチンの免疫効果は5〜10年で低下
■ 年齢別の感染傾向
年齢層 | 特徴 |
---|---|
0歳(特に6ヶ月未満) | 重症化リスクが非常に高く、死亡例もあり |
1〜9歳 | 免疫が減弱し、再感染することがある |
10〜30代 | 軽症で見逃されやすく、感染源になりやすい |
60歳以上 | 慢性咳や合併症で重症化の恐れ |
■ 感染力と再生産数
百日咳の基本再生産数(R₀)は12〜17と非常に高く、インフルエンザやCOVID-19を上回る感染力を持ちます。
- 潜伏期間:5〜10日(最大21日)
- 感染ピーク:風邪様症状が出るカタル期
■ ワクチンと予防の現状
● 日本の定期接種
対象年齢 | 回数 | ワクチン名 |
---|---|---|
生後3ヶ月〜 | 4回 | 四種混合(DPT-IPV) |
● 成人への追加接種
成人向けにはTdap(成人用三種混合)ワクチンの接種が推奨される場合があります(特に妊婦、育児従事者)。
● 課題
- 成人への定期的な追加接種制度の未整備
- 咳が長引いても百日咳と診断されにくい
■ 世界における百日咳の状況(WHO)
- 年間約2,400万人が罹患
- 乳児を中心に約16万人が死亡
- 欧米諸国では妊婦へのTdap接種が推奨されている
■ 福岡市での対策ポイント
- 乳児を守るには周囲の大人の感染予防がカギ
- 「咳が2週間以上続く」場合は百日咳の可能性を疑う
- 医療機関での早期診断と隔離対応が重要
福岡県における百日咳の感染状況と疫学情報(2025年6月時点)
■ 福岡県内の感染状況
福岡県では、2025年第20週(5月12日~5月18日)時点で、百日咳の累積報告数が前年同週比で約38.9倍となり、2018年以降で最多となっています。
福岡県庁「百日咳の感染者が増加しています!」
特に、1歳未満の乳児、中でも生後6ヶ月未満の乳児は重症化しやすく、死亡例も報告されています。 成人では症状が軽微なため、気づかずに乳児へ感染させてしまうケースが懸念されています。
■ 百日咳の臨床経過
-
カタル期(1〜2週間)
軽い咳やくしゃみ、微熱、鼻水など風邪に似た症状が現れます。 この時期が最も感染力が強いとされています。 -
痙咳期(2〜6週間)
咳が激しくなり、発作的な咳が続きます。 咳の後に「ヒュー」という吸気音が出ることがあります。 乳児では無呼吸や顔面紅潮、嘔吐を伴うこともあります。 -
回復期(2〜3週間〜)
徐々に咳発作が軽減しますが、夜間や運動後に咳が再燃することがあります。 全経過は6〜10週間程度に及ぶこともあります。
■ 感染経路と予防策
- 感染経路:咳やくしゃみによる飛沫感染、または手指を介した接触感染。
- 潜伏期間:約5〜10日。
- 予防接種:DPT-IPV-Hib五種混合ワクチンの定期接種が推奨されており、生後2か月から接種可能です。
- 追加接種:年長児や小学生には、三種混合ワクチンの追加接種(自費)も検討されています。
- 感染予防:咳エチケットの徹底、こまめな手洗い、体調不良時の外出自粛が重要です。
■ 福岡県からの注意喚起
福岡県は、百日咳の感染拡大を受けて、以下の対策を呼びかけています:
- 乳児を守るため、家族全体での予防接種を検討する。
- 咳が2週間以上続く場合は、早期に医療機関を受診し、百日咳の可能性を考慮する。
- 感染拡大を防ぐため、咳エチケットや手洗いの徹底を行う。
詳細な情報や最新の感染状況については、以下のリンクをご参照ください:
福岡県感染症情報センター:感染症週報
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